プロダクトデザイナー転職ガイド2019 18)複数社を同時に受験する場合

今回は、複数の企業を同時に受験する際のポイントについてお伝えします。ここの調整も我々の腕の見せ所なので、皆さまにアドバイスしている内容からいろいろとお伝えします。

※1年ほど前に掲載した内容を加筆したものです。一気に読みたい方はこちら。(ただし2019更新情報が反映されていません)https://www.bt2.net/oyaku

 先日、ある候補者に求人をご紹介したところ、こんな問い合わせがありました。
「現在A社を受けているところなのですが、他の会社を受けても大丈夫でしょうか。」
基本的には問題ありませんが、最終面接が近い場合は慎重に動く必要があります。

まだ内定までいくつかのステップがあるとわかっている場合は全く問題ありません。その会社と自分が合うかどうかというのは受けてみないと分からないことがあるので、可能性を広げることは大切なことです。

しかし、注意しなければいけないのは最終面接の段階、もしくはデザイン事務所など小規模な組織で最初から社長面接となるような場合です。以前のコラムでも書きましたが、大企業は数カ月かかることも多いのに対し、事務所等では早い場合だとその場で、遅くとも数日から1,2週間で最終回答(=内定)が出ることが多いです。その時どうするのか、あらかじめ決めておく必要があります。

実際に以下のような例がありました。

実例1
最終面接の場で「当社としてはぜひ入社してほしいと思ってるんですが、○○さんはうちに来てくれますか?」と質問がありました。その方は他の企業を受けていました。そこで、年収についてご質問をし、その場で給与の交渉となりました。具体的に自分の現在の生活環境から最低希望年収を正直に伝え、先方も真摯に検討し、できる限りの年収を回答しました。希望には届きませんでしたが、その真摯な態度と熱烈なラブコールに心を動かされ、入社を決めました。
 
この方は事前に先方にも他の企業も受けていることを伝えてありました。また、私が「今回いきなり結論が出る可能性があります、もし内定をもらったらどうしますか?」と事前に聞いていました。それで2人とも心の準備ができていたので、面接時にスムーズに答えられたのだと思います。
 
実例2
もう1名は第一希望の会社が大企業でなかなか決まらず、2次面接を待っている段階。その間に第二希望の会社から内定をいただいてしまい「1週間以内に内定を受けるかどうか、回答をください」と言われてしまいました。この方は悩んだ結果、「もし万一ダメでも、ここであきらめたらあとで後悔しそうだから」と第一希望を優先し、第二希望の会社はお断りをしました。彼は2次面接で落ちてしまったのですが、その後にまた別の会社で内定を取り、現在もそこで活躍しています。
 
このように、ケースによっては「実は他の企業を受けていて、そちらの結果を見てから判断させてください」ということは可能です。
なお、大企業の場合は最終面接は社長の面通しの意味しかない形だけのもの、というケースもあります。そうした場合だと「社長のスケジュールをわざわざ取ったのに、内定出して逃げられてしまったなんて、人事部は何をやってるんだ」と人事部の立場が危うくなる場合があります。そのような大企業ではたいてい、最終面接の前に意思確認がありますので、給与面の不満や他社を受けていて回答がもう少しかかるようであればそれを伝えてあげてください。人事部側も、給与面の考慮や、日程の先延ばしなど、最大限の協力をしてくれます。

以下、具体的なケースと選択肢で見てみましょう。
・A社・・・第一志望。まだ受験中で、結果は出ていない。
・B社・・・第二志望。今回、最終面接になってしまった。
このケースで、B社の最終面接を迎えるにあたり、以下3つの選択肢があります。

選択肢1)正直に別な企業も受けていることを話す。

この選択肢では伝え方が重要です。いくら誠実な態度がよいといっても、「第一志望の会社がまだなので、そちらが落ちていたら御社に行きます」等と言ったら、相手(B社)を不快にさせてしまいます。そうなると、あなた自身のちょっとしたマイナス点が気になるようになり、過剰に評価が低くなって面接で落とされる可能性もあります。

お勧めの伝え方は「別な企業も受けていて、そちらも受かったら良く考えてから決めたい」というものです。「よく考えてから決めたい」と、結論を濁しているところがミソで、現時点ではどちらも甲乙つけがたい、というようなニュアンスが伝わります。結果としてA社を選んでも、「よく考えた結果、A社に決めました」ということであれば、B社も不快感は少ないです。

なお、他に候補企業がいると伝えることは、少々不利になることもあります。実力が近い別の候補者がいる場合、「御社しか受けていません」という志望度が高い人の方が、入社後に活躍してくれるのではないか、と思われるし、何より好感度が上がるからです。(ある程度の経験者の中途採用では実力差が大きいのでそこまで影響はありませんが、若い経験の浅い方は要注意です)

前述のような大企業の場合は、他の候補企業が終了して「内定したら必ず行きます」という結論が出るまで最終面接を伸ばしてくれることもあります。

選択肢2)他を受けていることは黙っておいて、最終面接の日程を先延ばししてもらう。

これは前述のように別の候補者がいて比較されたくない場合、「仕事が忙しくて休みが取れないので」などの理由をつけて、面接日程を1,2週間待ってもらう、という方法です。ただ、あまり長く待たせると、ライバル候補がすぐに面接を受けて印象が良かった場合は、「待てないからもう決めました」といわれてしまうこともあります。人事部の方もプロなので、これまでの言動から「うちが第一志望ではないな」とうすうす感づいているからこのようなことがありえます。

※もし第一志望の会社なのに仕事が忙しくて休みが取れない場合は、「御社が第一志望なんですが、仕事が忙しくて・・・」と一言つけてあげれば先方も安心して待ってくれます。

選択肢3)黙っておいて面接を受け内定を取っておき、第一志望に受かったら断る。

あまりお勧めはしません。デザイン業界、特にプロダクトデザイン業界は非常に狭いです。断った企業の方とワークショップやセミナーで出会ったり、上司がその企業の責任者と同級生、などということはよくあります。将来、またお会いすることを前提に、真摯な気持ちで対応することをお勧めします。

ただ、窓口になっている人にもよります。事務的に右から左へと処理しているような人事部の方が窓口になってしまった場合、そもそも「他にも受けている、もし内定をもらってもそこが決まるまで回答できない」などの状況がデザイン部門に全く伝えられないこともあります。

そのような際には仕方が無いので、この選択肢を取ることになります。もちろん前述のようなマナーある態度も大切ですが、転職はその後の人生を大きく左右するので、最後は自分の気持ちを優先するしかないかと思います。

以上、ご参考になりましたら幸いです。

<来週はまた別のテーマです>(下村航)

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