転職活動をする中で見落とされがちなポイントがあります。それは「その企業にデザイナーが何人いるのか」という点です。この情報は職場環境やキャリア形成に大きな影響を与えるため、ぜひ注目してほしいポイントです。
※過去に掲載した内容を加筆したものです。一気に読みたい方はこちら。
弊社はメーカーのプロダクトデザイナーやグラフィックデザイナー求人を得意としており、日本を代表する企業とも多数取引があります。また、登録者との面談を通して、取引がない企業のデザイン部門の実態を知る機会も多いです。
その中で驚かされるのは、メーカーでもデザイナーがいない企業が少なくないということです。特にBtoB向けの企業では「消費者向けではないため、見た目にこだわる必要がない」「必要な時は外部のデザイン事務所に依頼する」という考え方が多いようです。
(※BtoB商品でもデザイナーが関与することで大きな成果を上げている企業もあり、非常にもったいないと感じます!)
ここでは、企業のデザイナー数に注目し、それぞれの良い点と課題について詳しく解説します。応募を検討する際の参考にしてください。
1)デザイナーが少数の大企業
社員が数万人いるような大企業でも、デザイナーが10人以下という場合があります。こうした環境では、1つのプロジェクトでエンジニアが10数人いるのに対し、デザイナーは1人のみということがよくあります。
デザイナーが少数だと、自分の意見を通すのが難しい場合が多々あります。一方で、大規模なプロジェクトに携わる機会が多く、得られることが多いのは大きな魅力です。例えば、都市の交通インフラ整備や数十万人が使う機械の設計に関われることもあります。また、プロジェクトのデザイン業務を一手に担うことで、短期間での成長が期待できます。
転職の観点からもう一点、インハウスデザイナー求人では、インハウス経験者が歓迎されます。これまでの経験で、社内のデザイナーではない人々、デザインへの理解がない人たちを説得することに慣れているからです。
2)デザイナーが1人しかいない企業
スタートアップ企業や中小企業では、社内にデザイナーが1人しかいない場合が多いです。弊社が扱う求人も、「1人しかいないデザイナーが退職してしまったので、新たなデザイナーが必要」というご相談をよくいただきます。ごくまれですが、「これまでは外部に委託していたが、初めての社内デザイナーを迎えたい」というケースもあります。
このような環境の場合は、先輩や同僚デザイナーがいないため、社内でデザインを学ぶ機会が少ないところがが課題となります。その中でもうまく成長している人は、オンラインで独学したり、社外の知り合いに教わったり、外部のセミナーで情報収集をしているようです。
一方で、1人で業務全体を回さなければいけないため、業務設計やプロジェクトの進行管理など、デザインの周辺スキルが自然と磨かれることが多いです。
なお、こちらも1)デザイナーが少数の大企業 と同様に、デザインへの理解がない人を説得するのが大変な場合も多いですが、経営陣がデザインの重要性を理解している場合、広義のデザイナーとしての意見が尊重され、社内で責任ある立場になれることがあります。
転職の観点でいえば、デザインを身近で学ぶことができませんが、業務全般の回し方、デザイン業務の設計などを自分ひとりで切り開いていくので、転職しても新天地でも柔軟に活躍できる人が多い印象です。ただし、外での情報収集・知識吸収をおろそかにしている人はスキルや知識が凝り固まってしまい、転職に苦労するケースもあります。
3)デザイナーが多数いる大企業
例えば、消費者向けの商品を扱う企業や自動車メーカーの場合は、デザイン部門が数十人、数百人規模で組織されていることがあります。こうした企業では、デザイナーの意見が通りやすく、上司や同僚から学ぶ機会も多いです。デザイナー同士で切磋琢磨できるため、技術的なスキルだけでなく、デザイントレンドにも敏感で、感性やアイデアの幅も広がりやすく、デザイナーとしてのスキルアップもしやすいように感じます。
一方で、人数が多い分、なかなか自分の番が巡ってこないことがあると思います。社内コンペで勝ち残らなければ自分のデザインが何年も製品化されないことや、希望しない製品の担当になることもあります。また、大企業であるがゆえに、社内調整の仕事に忙殺されているという話もよく聞きます。
4)デザイン会社やデザイン事務所の場合
インハウスデザイナーと単純に比較するのは難しいですが、デザイン会社、デザイン事務所の場合も社内に多数のデザイナーがいて、よい点は3)デザイナーが多数いる大企業 と共通していると思います。インハウスデザイナーと異なる点は、クライアントの幅がが広ければ多様な業種のデザインに関われることです。短期間で多くの経験を積めるので、デザインスキルを習得する点では良い環境といえます。
ただし、デザインを納品して終わり、ということが多いです。そもそも製品化を予定しない、刺激のためのアイデアだしを求められることもあります。デザイン完成後の量産のための調整や販促デザインへの指示など、「ものづくりの全体像に携わりたい」人には物足りなさを感じることもあるでしょう。
自分に合った環境を見極める
それぞれの特徴を理解したうえで、自分のキャリア目標や価値観に合った企業を選ぶことが重要です。
できれば他の環境も一度経験してみると、どの環境が合っているかわりやすいですが、そのために転職を繰り返すわけにもいきません。
例えば、3)、4)に該当する人は、社内で1人のプロジェクトが発生した場合に積極的に手を挙げてみると1人デザイナーへの適性がわかるでしょう。 1)、2)に該当する人は、社外でデザイン講座を受けたり、デザイナー同士が集まるグループワークを経験することで、デザイナーが多数いる環境と似た経験ができると思います。デザイナーとしての可能性を最大限に引き出すために、環境選びも転職の検討要因の一つとして考えてみてください。
(下村航)
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