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デザインの基礎知識 アーカイブ

2009年10月23日

アシンメトリー(左右非対称) ~2~

前回、西洋のシンメトリー(左右対称)に対して、
日本人には縄文時代から受け継がれるアシンメトリー(左右非対称)を
愛する血が流れているという話をした。

縄文時代から時が流れ、三〇〇年間の鎖国が続き、
渡来文明から隔絶された江戸時代に、
アシンメトリーという日本人の美意識は再び花開き、
市民文化として洗練された。
浮世絵に代表される江戸時代中期以降の洗練された美意識が、
ジャポニズムとして十九世紀の西洋に受け入れられ、
アール・ヌーヴォーという美術運動を巻き起こすきっかけになった。

十九世紀のヨーロッパは、工業化社会の初期で、
単純な旋盤やフライス盤でできる、不細工でシンメトリカルな製品しかなく、
人々はシンメトリーな製品の退屈さや陳腐さに辟易していた。
アール・ヌーヴォーは、西欧で唯一、シンメトリーとアシンメトリーの
葛藤の時代だったと言っていいだろう。

その後、西洋は、モダンデザインの還元主義的な歴史分析により、
シンメトリーが失地回復を果たし、現在に至っているが、
工業デザイン大国となり、モダンデザインを信奉する日本は、
今でも、アシンメトリカルな美意識を堅持している。
スズキ「ジェンマ」の左右非対称なフロントライトのレイアウトや、
写真の日産「キューブ」のアシンメトリカルなリアウインドウの構成は、
間違いなく、日本のオリジナルデザインだ。

シンメトリーに対するアンチテーゼを発信し続ける日本だからこそ、
工業デザインで世界の注目を集めているのだろう。

(木全)


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2009年10月09日

アシンメトリー(左右非対称) ~1~

欧米や中国に行くと、シンメトリー(左右対称)な建築物の多さに驚かされる。
日本にいると気づかないが、日本の建築物は
ほとんどアシンメトリー(左右非対称)な構成をしている。
日本で、完全にシンメトリーな建築物を探しても、古いものでは神社仏閣、
新しいものなら西洋由来のモダンデザインの建築物以外見かけない。
地方都市でまだ健在な伝統的和風住宅は、必ず左右非対称な構成をしている。

和風とシンメトリーは相容れない。
これには、歴史的な背景があるようだ。
縄文土器の美しさを再発見した、画家の岡本太郎が指摘したように、
日本の美意識の根底には、縄文土器の「おどろくほどはげしい」隆線紋の力強さと
アシンメトリーがある。

縄文時代の後、稲作を伝来した渡来文明による
シンメトリカルな土器を作る弥生時代になるが、
縄文時代の八〇〇〇年に較べれば、弥生時代はたった六〇〇年、
弥生時代から現代までも、たかだか二〇〇〇年程度の歴史しかない。
日本人には、縄文時代から受け継がれるアシンメトリー(左右非対称)を
愛する血が流れている。
弥生時代以降、渡来文明との衝突のたびに、
シンメトリーとアシンメトリーの葛藤が繰り返され、
日本では、渡来文明がもたらすシンメトリーは、
権威主義と分かちがたく結びついてしまった。

作家の池澤夏樹が、その著書「母なる自然のおっぱい」の中で、富士山を
「陳腐なほどのシンメトリーだから、これほど印象的な山はない」
と書いたのは、わが国の美意識では権威主義は陳腐であり、
権威主義的だから富士山は霊峰たりえたのだということだろう。

(木全)


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